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「でもヨーガ(アサナ)には、ブジャンガアサナ(コブラのポーズ)といって、ハラアサナ(鋤のポーズ)と逆のポーズもちゃんと行います」 ―― とのご意見がでるかもしれません。しかし、人体構造をしっかりと専門的に学んでいれば、そのような意見が通らないことにすぐに気づけます。
コブラのポーズでは、環椎後頭関節部に続いて第四〜第五頸椎部は前彎しますが、頚胸椎移行部をうまく前彎させることは困難です。前彎させるための支点がうまく定まらないのです。
図4
さらに問題となるのは、第四〜第五腰椎部や腰仙関節部の過剰な前彎の発生です。図5
この部分は腰椎の中で最も腰椎椎間板ヘルニアを発生しやすい部分であると同時に、後天的な腰椎滑り症を発生させる部分です。
もし、この様な問題がいったん生じてしまうと、生殖器や泌尿器に関わる自律神経機能のバランスが崩れます。これにより、生理痛、子宮筋腫、前立腺肥大、頻尿などといった問題を招くことになるでしょう。図3、5、10
30年間ヨーガの指導をされてきた方の腰痛発生の大きな原因がこの辺にあるものと思われます。
なお、ブッジャンガアサナに限らず、チャクラバンダアサナ(車輪のポーズ)図6やラージャカポータアサナ(鳩王のポーズ)図7などの過剰な背筋収縮系のポーズのすべてに、先のような問題を発生させる要因が潜んでいます。
ちなみに、器械体操や新体操の選手もこれに似たポーズを行いますが、器械体操や新体操はあくまでも得点を競う競技であり、健康法ではありません。
ですから、このようなポーズを行った末に体を痛めたとしても、それはそれでいたし方なしであり、羊頭狗肉とはなりえません。
なお、これらのポーズでは環椎後頭関節部が過剰に圧迫されます。
ですから、ちゃんと元の状態に納めておかないと、不眠症・眼精疲労、顔面筋痙攣・後頭部痛・偏頭痛・頭重などを招くことになります。図4、6、7
あるいは、頭頂と両肘を支点として逆立ちするシールシャアサナとよばれるポーズがあります。図8
頭頂―背骨―骨盤―両脚が曲がりなく並んでいる人がこのポーズを適度な時間おこなうのであれば、血液や体液の流れなども逆転し、内臓に程よい刺激が加わることでしょう。
しかし、利き手・利き足をもち、車や椅子への依存度の高い現代人の多く(あるいは、ほとんどの人)には、姿勢にみだれがあります。
ですから、そのような方々がシールシャアサナを行うと、本来支えるべきではない部分で歪んだ背骨を支えることも重なって、頸椎・胸椎・腰椎などの椎間板や椎骨そのものに過剰な負担をかけてしまいます。図9
背骨にさらなるみだれが生じ、脊柱側彎を強めたり、ここを通路や出入り口とする自律神経や体性神経にも加減の悪い影響を及ぼすことになるのです。図10
先のヨーガ指導者の背骨の胸椎右凸変位は、このようにして形成された可能性が高いものと推測されます。
結局、姿勢が斉わないままでシールシャアーサナを続けることで、自ら変形性脊椎症や変形性頸椎症の原因をつくることになるわけです。しかもこれに関連して、偏頭痛・蓄膿症・眼精疲労など、自律神経失調症、脊椎側彎症、筋肉の偏在と緊張などを招いてしまうことにもつながりかねません。
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